最初に診断を受けた医師からは休職を進められる

やる気のある女性

 

はじめてパニック発作が起こったときは、ほとんどの人が不安や恐怖にかられ、気が動転してしまいます。32歳の会社員の知子さんも、もちろん恐怖にかられました。

 

しかし一方では、「これはパニック発作かもしれない]と、自分の状態を冷静に見る目も持っていました。本を読み少し病気の知識があったためでした。

 

知子さんは外出中でしたが、救急車は呼ばず、急いで近くの喫茶店に入り、少し落ち着いたところで自宅に戻りました。翌日には、近所の心療内科を受診しました。やはりパニック障害でした。

 

医師からは抗うつ薬と抗不安薬が処方されましたが、日常生活への助言などは特にありませんでした。知子さんは、不安のため、一人では外出できなくなっていましたが、自分で何とかするしかないと、患者会に入ったり、自律訓練法の本を読んだりして、対処法を学びました。

 

1年後には、発作はほとんど起こらなくなりました。一人で出かけることもできました。これで発症前のような生.活に戻れる。そう思っていた矢先、前にはなかった症状があらわれるようになりました。

 

意欲がわかない、倦怠感がある、食欲が異常にある、体が鉛のように重い、朝から眠いといった症状です。それでも、無理に出社すれば、症状が消えるため、仕事はできました。

 

しかも、こういった状態をくり返しているうち、またパニック発作が起こるようになりました。何とか出社していましたが、自宅に戻るとパニック発作を起こし、疲れているのに眠れないといった状態で、欠勤がふえていきました。

 

医師に相談しても、「仕事を休みなさい」「いっそ仕事をやめたほうがよい」といった答えしか返ってきません。やむをえず1カ月間休職しましたが、それでもよくなる気配がありませんでした。知子さんは、別の医師にかかることを決めました。

 

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新たにあらわれたのは 不安うつ病の症状だった

新しい医師は、知子さんの状態をパニック障害にうつ病を併発した状態と診断しました。うつ病は、非定型タイプの「パニック性不安うつ病」で、脱力感や無気力、鉛のような体の重さ、異常な食欲などは、パニック性不安うつ病の典型的な症状だと医師は説明しました。

 

「仕事に戻りたい」という知子さんの希望には、「症状は薬でコントロールできますので、早目に復帰してください」という答えでした。知子さんは、この病気になってはじめてうれしい気持ちになりました。医師からは、生活上のアドバイスも受けました。体内時計をととのることが重要だと知りました。

 

薬は、それまでのものに1種類加えただけですが、症状は2週間ほで軽くなり、1カ月後には仕事に戻ることができました。パニック発作も、もう起こらなくなりました。

 

知子さんは、回復などとても考えられなかった半年前を思い出します。そして、あのようなうつ状態をかかえて長期に休職したら、そのまま仕事をやめて、家に引きこもってしまっていただろうと思うのです。

 

 

アドバイス:うつ病になった原因を自分で見つめてみる

パニック障害にうつ病(パニック性不安うつ病)を併発すると、ふつうは回復までにかなり時間がかかります。しかし、このケースの知美さんには、早く回復する要素がいくつもありました。

 

症状が比較的軽かったこと、発症年齢がやや高かったこと。さらには自分の病気に対して積極的に対処しようとする姿勢があったことなどがプラスに働いたのです。

 

また、パニック性不安うつ病には「気分反応性」という特徴があります。自分にとってうれしいこと、好ましいことがあると、うつ気分が軽くなったり消えたりしますが、少しでも自分に都合が悪かったり、いやなことがあると、激しく気分が落ち込みます。

 

患者さんは、この「自分に都合が悪いこと、いやなこと」に引きずられないで、第三者的に冷静な目で自分を見ることが大切です。それが回復につながるのです。たとえば、いわゆるうつ病(定型うつ病)では、ずっとゆううつ感に悩まされ、落ち込んだ状態がつづきます。

 

ところが、非定型タイプのパニック性不安うつ病は、まわりに影響されて、気分が激しくアップダウンします。問題は、アップダウンの「ダウン」のときです。落ち込んでいるときはふつう何も考えられませんが、「この落ち込みは、いやだと思うことへの自分の反応だ」と冷静に見ることができれば、気持ちに振り回されずにすみます。

 

このケースの知子さんにも、医師は、「うつ状態をまねいた自分の考え方のクセを、第三者的な目で冷静に見直してみてください」と助言しました。知子さんは、自分がうつ状態になった背景には、「ストレス」と「怒り」があったと思いあたりました。人から指摘されるのではなく、自分で考え、理由がわかったことで、知子さんはうつ状態から抜け出すことができました。

 

パニック性不安うつ病の気分反応性は、患者さんの仕事について考える場合も重要となります。知子さんのように仕事への意欲が高い人にとって、「休職しましょう」「やめたほうがよい」というアドバイスは、治ろうとする意欲までそぐことがあることを知っておきましょう。

 


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