パニック障害では抗うつ薬と抗不安薬の併用で治療を開始します

パニック障害の薬

 

パニック障害に有効な治療薬にはさまざまなものがありますが、通常は主に抗うつ薬の「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」とベンゾジアゼピン系の「抗不安薬」が使われます。

 

パニック障害の治療ガイドラインでは、治療開始時には、効果が高く副作用が少ないSSRIを第一選択薬とし、即効性のあるベンゾジアゼピン系の抗不安薬を併用することを推奨しています。
しかし、どの薬をどのように使うかは患者さんとの相性もあり、また状態によっても違ってきます。

 

 

副作用が少なくて効果が高い「抗うつ薬」

 

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

セロトニンは脳内にある神経伝達物質で、不安感を抑え、心を安定させる働きがあります。

 

パニック障害は、このセロトニンの不足が原因の一つと考えられています。

 

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、セロトニンがもとの細胞に再び取り込まれるのを防ぐことで減少を抑え、セロトニンをふやすように働きます。

 

パニック障害の治療薬として日本で認可されているSSRIは、パロキセチン(商品名:パキシル)とセルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)で、この2つは健康保険が適用されます。

 

また、保険適用はされませんが、フルボキサミン(商品名:デプロメール、ルボックス)やエスシタロプラム(商品名:レクサプロ)が使われることもあります。

 

エスシタロプラ厶は、米国ではパニック障害の治療薬として認められています。

 

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特徴
  • パニック発作をよく抑えますが、効果が実感できるまでに時間がかかります。少なくとも2〜4週間、人によって8〜12週間かかります。このことを服用前に十分理解し、あせらないようにすることが大切です。
  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬とくらべ、広場恐怖症にも高い効果があります。
  • 服用は1日1回でよく、適量を服用すれば比較的安全です。ただし、服用量は医師の指示を守ることが大切です。
  • 依存性はありません。
  • セロトニンだけに選択的に働き、ほかの神経伝達物質には作用しないため、抗コリン作用による副作用はほとんどありません。
問題点
  • 副作用は少ないのですが、飮みはじめにイライラ感や興奮などが強くなり、過活動状態になることがあります。
  • 吐き気や食欲不振、眠気、めまいなどの副作用が出ることがあります。
飲み方

1日に飮む用量は、パロキセチンは40mg、セルトラリンは100mg、フルボキサミンは150mgとされていますが、患者さんによって効果があらわれる量は異なります。
初期の過活動を助ぐため、少量から飲みはじめます。初期の1日量としては、パロキセチン10mg、セルトラリン25mg、フルボキサミン25〜50mgが推奨されています。
吐き気などの消化器症状を防ぐためにも、少量からはじめることがすすめられます。胃腸薬を併用するのもよいでしょう。

 

 

三環系抗うつ薬

三環系抗うつ薬は、SSRIが開発されるまでは、パニック障害の治療薬の主流でした。

 

そもそもパニック障害という病気が認識されたのは三環系抗うつ薬のイミプラミンがパニック発作に高い効果を見せたことがきっかけでした。

 

現在でも、SSRIが使えない人、効果が出ない人、症状が強い人などには三環系抗うつ薬が使われる場合があります。

 

薬としては、イミプラミン(商品名:トフラニール)とクロミプラミン(商品名:アナフラニール)があります。

 

特徴
  • セロトニンとノルアドレナリン(神経を興奮させる神経伝達物質)両万の再取り込みを阻害してパニック発作を抑えます。
  • 空間恐怖や回避行動など、随伴症状にも効果があります。
  • 効果があらわれるまでに時間がかかり、少なくとも4〜8週間は服用をつづける必要があります。
  • 作用が長く持続しますので、1日1回の服用でだいじょうぶです。
  • 依存症はありません。
問題点
  • 飲みはじめた最初の週に、神経過敏や不安、身ぶるい、頻脈、ソワソワ感などがあらわれることがあり、服用中断の原因になります。
  • アセチルコリンの働きを遮断するため、かすみ目、口の渇き、手のふるえなど、抗コリン作用による副作用が出ることがあります。
  • 過量を服用すると、心機能を低下させるおそれがあります。
  • 長く服用すると、体重増加や血圧上昇が起こる場合があります。
飲み方
  • イミプラミンは、少量(1日量10mg程度)から飲みはじめます。
  • 5〜7日ごとに、25〜50mg程度の割合で少しずつふやしていきます。
  • 有効かどうかを見るには、1日量150mgで、少なくとも4〜6週間つづける必要があります。

 

SNRI(セロトニン・ノルアオレナリン再取り込み阻害薬)

SNRI(セロトニン・ノルアオレナリン再取り込み阻害薬)は、SSRIにつづいて認可された抗うつ薬す。

 

SSRIがセロトニンだけに作用するのに対して、SNRIはセロトニンとノルアドレナリンの両方に作用します。

 

薬としては、ミルナシプラン(商品名:トレドミン)とデュロキセチン(商品名:サインバルタ)があります。

 

特徴
  • 特に意欲低下や無感動などに効果があり、パニック性不安うつ病に適応です。
  • 抗コリン作用による副作用があまりありません。
問題点
  • 吐き気、姨痛、排尿困難、高血坏などの副作用が見られることがあります、

 

抗コリン作用
アセチルコリンは、心臓や気道などの筋肉を刺激し収縮させる神経伝達物質ですが、抗うつ薬や抗精神薬にはこのアセチルコリンの働きを抑制する作用があります。これを抗コリン作用といいます。そのため、抗コリン作用がある薬には、口の渇き、かすみ目、便秘、ふらつき、排尿困難(尿が出にくい)、吐き気、頭痛、頻脈など多様な副作用が起こる可能性があります。

その他の抗うつ薬

スルピリド(商品名:ドグマチール、アビリット、ミラドール)という抗うつ薬は、従来の三環系抗うつ薬とは異なる作用があり、パニック障害に有効です。

 

特徴
  • 意欲賦活作用があり、「不快な身体的不定愁訴を改善する」「クヨクヨと思い悩むこだわりをなくす」「病気に立ち向かう気にさせる」といった効果が期待できます.
  • 消化管の運動を活発にし、食欲を高めたり、吐き気や腹部の不快感多改善する作用があります。
問題点
  • 女性の患者さんの場合、乳汁分泌、無月経、体重増加などがあらわれやすいため、治療開始のときだけ使うなどの対処をします。

 

 

 

効果が速くあらわれ発作を止める「抗不安薬」

 

ベンゾジアゼピン系抗不安薬

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬には、神経の興奮や不安をしずめる神経伝達物質ギャパの活性を高める働きがあり、特にパニック発作予期不安に即効性があります。

 

患者さんにとって、くり返し起こるパニック発作からの解放はもっとも切実な願いです。

 

しかし、SSRIでは、効果があらわれるまでに時間がかかります。

 

その点、作用時間が短いベンゾジアゼピン系抗不安薬なら、パニック発作をすぐ抑えてくれるというメリットがあります。

 

そのため、治療当初は、SSRIとベンゾジアゼピン系抗不安薬を併用し、SSRIの効果があらわれたらベンゾジアゼピン系抗不安薬のみを中止するというう方法がすすめられています。

 

その理由としては、ベンゾジアゼピン系抗心安薬にはいろいろ副作用があるために、長期にわたって大量に服用をつづけることは避けたほうがよいとされているからです。

 

特徴
  • パニック発作を確実に抑えます。
  • 予期不安にも効果がありますが、広場恐怖症うつ状態にはあまり効きません。
  • 作用時間(薬が体内に入って半分の濃度に低下するまでの時間)によって、短時間型(6時間以内)、中間型(12〜24時間以内)、長時間(24時間以上)、超長時間型(90時間以上)があります。
問題点
  • 眠気、ふらつき、動作がにぶくなる、不器用になる、記憶力や注意力が低下する、攻撃的になる、といった副作用が出ることがあります。
  • 耐性(薬の効きが悪くなる)や依存性(飲みつづけるとやめられなくなる)があります。
  • 服用を突然中断すると、症状が再発したり離脱症状(吐き気、耳鳴り、けいれんなど)が出ることがあるため、減薬は時間をかけて徐々に行う必要があります。
使い方・飲み方
  • パニック発作が起きたとき応急的に服用したり、安心して外出するために頓服(症状が出たときに服用する)として持っていく、といった使い方ができます。ロラゼバム(商品名:ワイバックス)は、舌下で服用すると速く効くので、不安時の頓服薬として有効です。
  • 服用初期の眠気やふらつきを防ぐため、たとえばアルプラゾラム(商品名:コンスタン、ソラナックス)は1日03.4〜0.8mgから、クロナゼパム(商品名:リボトリール、ランドセン)は1日0.25mgないし0.5mgを就寝前に服用することからはじめます。
  • 最高量は、アルプラゾラ厶は1日6mg、クロナゼパムは4mgまでとし、少しずつふやしていきます。
  • 服用間の発作を防くため、アルプラゾラムは1日4回に分けて飲むことがすすめられます。クロナゼパムは効果の持続時間が長いので、1日1〜2回の服用で大丈夫です。
  • 急に断薬すると離脱症状が出ますので、少しずつ減薬していきます。。
  • 依存性が生じないように、継続して服薬する期間は4週間にとどめます。発作が不安だからと、長期間漫然と服用しつづけるのは禁忌です。

 

そのほかの薬

 

β遮断薬

β遮断薬は、βアドレナリン受容体を遮断する働きがあり、不整脈の治療薬ですがパニック障害の治療にも使われています。

 

β遮断薬は、心臓の神経に直接作用して強い動悸をしずめるため、パニック発作による激しい動悸症状に有効です。

 

ただし、症状をやわらげるだけでパニック発作そのものを抑える働きはさほど期待できません。

 

βアドレナリン受容体
アドレナリンは.心拍数の増加や血圧の上昇、瞳孔の拡大、血糖値の上昇などにかかわるホルモンで、副腎で分泌されて体中の臓器に運ばれます。アドレナリンを受け取る受容体には3種類あり、β受容体は心臓、気管支、血管などにあります。

 

問題点

気管支を収縮させる作用があるため、ぜんそくの人が服用するのは危険です。

 

また、「血圧が下がる」「眠れない」「だるい」「吐き気がする」などの副作用も見られます。血圧が低い人は注意が必要です。

 


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