パニック障害では突然怒り出し、手がつけられないのが「怒り発作」です

怒り発作を起こすパニック障害の患者さん

 

すべての患者さんにあらわれるわけではありませんが、パニック障害の特徴的な症状に「怒り発作(アンガーアタック)」があります(詳しくは「パニック障害になると考え方や行動が変わってきます」を参照して下さい)。

 

この発作が起こると、患者さんは突然、いわゆる「キレ」状態になり、体をわなわなとふるわせて相手を非難したり、怒鳴ったりします。怒っているうちに怒りの感情がエスカレートして、自分でも止められなくなります。ときには暴力をふるったり、手当たりしだいにものをこわしたりします。

 

きっかけはささいなことが多く、ふつうなら理由にもならないことで怒り出します。たとえば、レストランで注文したものがなかなか来ないようなとき、突然に怒りが込み上げてきて、店長を呼びつけて激しくののしったり、怒鳴ったりします。

 

 

しかし、このような激しい怒り発作がおさまったあとは、本人も正気ではなかったと気づき、ひどい後悔と自己嫌悪におちいり、うつ状態になります。

 

パニック障害では、発作によって神経が興奮しやすくなり、ささいなことでも過剰な反応をしてしまいます(気分反応性)。

 

突然にやってくるパニック発作や恐怖と不安をともなう激しい身体症状。このようなパニック発作を何度もくり返、。しだいに重症化していくと、不安感や恐怖感のために、「怒り」を爆発させてしまうと考えられるのです。

 

また、女性で、ある一定期間に強くこの症状が出る場合は月経前症候群(PMS)の可能性があります。

 

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「性格」のせいではなく「病気」のせいと理解する

パニック障害の人が、怒り発作のような「困った行動」をとったとしても、それは病気のせいであり、決してもともとそういう性格だったというわけではありません。

 

病気のために性格か変わるということで問題になるのは、パニック性不安うつ病の場合です。

 

パニック性不安うつ病の「気分反応性」については、「家族の目線でうつ病の兆候を見過ごさないように気を付けましょう」でも述べました。

 

これはたとえば、数時間前までは、元気いっぱいで楽しそうに笑っていた人が、急にひどく落ち込み、暗く沈んだ様子になるなど周囲の人が困惑するほど気分の浮き沈みが極端になる症状です。

 

気分反応性は、あくまでも症状であり、決して性格的に自己中心的だったりわがままなわけではありません。そのことを理解しないで患者さんを責めると、患者さんは人格が非難されたと思い、激しく病的に反応します(拒絶過敏性)。

 

この拒絶過敏性の対象は、多くは家族や友人、恋人、職場の同僚や上司などです。本来なら見方であるはずの人たちとギクシャクするのですから、人間関係をそこね、ときには社会生活にも支障が出てきます。

 

パニック障害は、人格障害をもたらす病気のように見えますが、決しそうではありません。前にも述べましたが、過敏なのは、発作によって神経が興奮しやすくなっていて、ささいなことにも激しく反応してしまうためなのです。

 

パニック障害は、患者さんの心を傷つけ、その人が本来持っていた思考や行動のパターンを別のものへとかえてしまう場合があります。しかし、回復するにつれて、ほとんどの患者さんは、もともとの健康な心をとろ戻します。

 

家族はそのことを信じ、患者さんの一時的な感情に巻き込まれず、落ち着いて、冷静に対処することが大切です。

 

 

具体的な困った時の対応方法

 

患者さんが突然キレた場合

家族からすれば「そんなささいなことで」と思うようなことに、患者さんが並みはずれて激しい反応をすることがあります。

 

ある男性患者は、近所の赤ちゃんの泣き声を聞いて、「虐待されている」と思い込み、保健所に通報しました。パニック障害害では、自他の区別が不明確になることがあり、他人のことでも「人のことだから」と割り切れないのです。

 

このことを理解しない患者さんの家族は、「よその家のことなのに、差し出がましい」となじってしまいました。男性患者は、怒りが爆発して大声をあげ、家族もそれを受けていい返す ……結局、大喧嘩となり、男性患者は電話線を引きちぎって大暴れしました。

 

家族は、患者さんがどんなことで怒り発作を起こすのか学ぶ必要があります。わけもなく怒り出すこともありますが、そういう場合は、同じ土俵に立っていい返したりしてはいけません。そっと嵐が過ぎ去るのを待つのです。激情は、長くはつづきません。

 

患者さんは怒り発作がおさまると、「ばかなことをした」「申し訳ないことをした」と激しい自己嫌悪におちいり、うつ状態になる人もいます。また、人によっては、自分の行動をまったく覚えていない場合もあります。

 

覚えていない患者さんには、「このようなことをした」と、批判を加えずに事実だけを知らせてあげるのがよいでしょう。すでに十分反省している人には、少し時間を置き、「心配したよ」といってあげるのもよいでしょう。

 

ただし、過去の行動に触れることで新たな傷をつくると思われる場合は、そっとしておきます。

 

怒り発作への対処

  • 発作のときは、説得しても通じないことを知る
  • 相手が興奮しているときには、興奮で返さない
  • しばらくしたらおさまるので、落ち着いて待つ
  • 怒り発作がつづくような場合は、医師に相談する

 

 

 

わがままで自己中心的な行動をした場合

気分反応性がある患者さんは、まわりの状況に反応して気分が激しく浮き沈みします。少しでもいやなことがあると、はたから見れば、ごく些細なことでも激しく反応して、気分がふさぎ、蕩ち込みます。

 

一方、自分にとって楽しいこと、好ましいことがあると、うつ症状が急に軽くなったり、消えたりします。

 

さっきまで立ち上がるのもつらく横になっていた患者さんが、友人から電話がかかったとたんに嬉々として長話をしたり、好きなテレビ番組を楽しそうに見ていたりすると、周囲の人は、何と自分勝手でわがままだろうと思います。

 

事情がよくわからないと、わざとやっているのかと誤解することもあるかもしれません。

 

こういった自己中心的な行動に対しては、「何をしているの」「具合が悪かったはずでしょう」などと叱るのは、かえって逆効果です。非難や叱責は、患者さんの感情をいたずらに刺激して、症状はますます悪化します。

 

ただし、自己中心的な行動は、患者さん自身の社会生活にとって大きなマイナスとなります。そのことを教え、よい方向へと導くのは、家族の役割です。本人の気分が落ち着いているときを見はからい、「あなたの行動は、はたからはこのように見える」と客観的な視点からアドバイスをすることが重要です。

 

自己中心的な行動への対処

  • 患者さんは病気のために感情が敏感になっていることを理解する
  • わがままな行動に対して、非難したり叱責しても、症状を悪化させるだけと知る
  • 激しい感情に対しては、理性や冷静さで対応する
  • 社会生活を送る上でマイナスになる行動については、第三者の目で冷静にさとす

 

 

 

衝動的な行動をした場合

パニック障害の人は、長い間、不安や恐怖にさらされてきたことへの反動として、突拍子もない行動をすることがあります。それは、激しい精神的ストレスに対する、患者さんなりの「解消法」という面もあります。

 

ある男性患者は、突然大トカゲを飼いはじめました。これをきっかけに、彼は次々と爬虫類を購入して、家の庭に動物舎までつくってしまいました。

 

買い物に走る患者さんもかなりいます。ものを買うことの快感、買ったものを手元に置いて所有物にする満足感、買い物へ出かけるときの気分転換など、買い物によっ患者さんにはさまざまな高揚感が生まれ、それが不安解消になるのです。

 

ある女性患者は、ギャンブルに走って、家庭でひと騒動になりました。その女性は行動療法広場恐怖症を克胆し、はじめて訪れた場所が競馬場でした。そこで競馬の楽しさにめざめ、半年で数百万円をすってしまったのです。

 

これらは不安状態への反動的な行動ですから、多くは一過性のものです。経済的な問題が生じた場合など、家族は対応に追われ大変ですが、やがておさまります。危険行為に注意しながら、冷静に見守っていく姿勢が求められます。

 

ただし、一つだけ注意しなけれぱならないことがあります。衝勧的な行動をする患者さんには、「双極性障害亅が併発している場合があるのです。双極件障害は、躁状態とうつ状態をくり返す病気ですが、躁状態のときに危険をかえりみない行動をすることがあります。

 

米国の統計では、パニック障害にうつ病が併発すると、その4分の1は双極性障害の可能性があると報告されています。激し動きまわる(過活動)、感情のアップダウンが激しい、といった症状が見られたら、医師に相談する必要があります。

 

衝動的な行動への対処

  • ほとんどは一過性のものなので、危険行為に注意をしながら見守る
  • 経済的なトラブルには、あらかじめ対処も必要。お金の管理は家族がする
  • 双極性障害を併発している可能性を感じたら、医師に相談する

 

 

パニック障害について相談できる窓口

家族は、患者さんへの対応やケアで困ったときは一人でかかえ込まず、担当の医師や臨床心理士などに相談しましょう。ほかにも、以下のような機関で相談できます。

 

精神保健福祉センター

地域によって精神保健センターなど、呼び方が少し違いますが、全都道府県こそれぞれ1カ所設置されている公的機関で(複数のところもあります)。地域住民の精神医療情報を把握しています。

 

心の病気の予防、医療機関の紹介ほか、さまざまな相談にのってくれます。精神科医、精抻保健福祉士(精神科ソーシャルワーカー)、臨床心理士など、心の健康の専門家が対応します。

 

電話相談や面接相談は無料です(診察には費用がかかる場合も)。各地域のセンターの所在地等は厚生労働省のホームページの「全国の精神保健福祉センター一覧」を参照してください。

 

保健所

各地の保健所では、心の病気への取り組みも行っています。精神保健福祉センターが遠い場合は、保健所でも地域の精神医療情報を把握していますので、利用するとよいでしょう。電話相談を受け付けているところもあります。各地域の保健所の所在地等の情報は全国保健所長会のホームページの「保健所一覧」を参照してください。

 

一般社団法人 日本臨床心理士会

臨床心理士の全国組織です.。ホームページには各都道府県の臨床心理士の一覧、カウセリング施設検索「臨床心理士に出会うには」などが掲載されています。

 

臨床心理士に心理的な相談ができる無料電話相談も行っています。詳しくは「一般社団法人 日本臨床心理士会」のホームページを参照してください。

 

NPO法人 全国パニック障害の会

2001年にNPO法人に認可されたパニック障害の患者会です。会員は1000名以上おり、会員の症状にあわせてサポートするなど、きめこまかな活動をしています。

 

相談窓口は設けていませんが、ホームページでは、患者さんに支持されている病院・クリニック、カウンセラー、理・美容院などを紹介していますので参考になります。

 

詳しくは「NPO法人 全国パニック障害の会」のホームページを参照してください。


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