パニック障害では自傷行為は「助けて」という患者さんからのサインです

自傷行為を考える男性

 

パニック障害は、ほかの精神疾患とくらべると、自殺をはかる人は少ないといわれています。

 

しかし、「自殺を考える率(生涯自殺企図率)」はうつ病とあまりかわりなく、さらに、パニック障害にうつ病(パニック性不安うつ病)を併発すると、自殺企図率は3倍にもなります。

 

ただし、自殺企図(自傷行為)と自殺は違います。パニック障害の場合は、実際に自殺をはかるというよりも、死にたいほどつらいという思いが、一時的に強まって自傷行為をしてしまうと考えられるのです。

 

 

自傷行為は、自分で自分を傷つける行為です。日本ではリストカット(手首を切ること)が多いのですが、ほかにも、「皮膚に爪を立ててかきむしる」「腕を歯でかむ」「皮膚に夕バコの火を押しつけるI「壁に頭を打ちつける」「薬を大量に飲む」といった行為もあります。

 

パニック障害にうつ病を併発すると、なぜ自傷行為をする率か高くなるのでしょうか。これには、パニック性不安うつ病の「不安・抑うつ発作」が関係しています。

 

不安・抑うつ発作におそわれると、患者さんは、それまでの精神状態のスイッチが切りかわって、別の精抻状態に入り、まるで別人のようになります。

 

涙をぼろぼろと流したり、「だれも私のことを理解してくれない」「私は世界一不幸だ」と絶望したり、不安や焦燥感が強くなって、それをまぎらすためにさまざまな衝動的な行動をとります。その一つが自傷行為なのです。

 

 

自傷行為は、実際に死ぬつもりで行うわけではないといわれます。しかし、自殺の危険性がまったくないわけではありません。自傷行為をくり返す人は、そうでない人よりも自殺で亡くなる割合がずっと高いという研究報告もあります。将来、実際に自殺に発展するケースがないとはいえないのです。

 

家族などまわりの人は、こうした自傷行為にショックを受け、あわてたり心配したりします。しかし、大切なことは、自傷行為をするに至った患者さんの気持ちを理解することです。「どうせ本気ではないのだから」「心配してもらいたいからだろう」などと安易に片づけることは、決してしてはいけません。

 

自傷行為は、患者さんからの「助けて」のサインと受け止め、患者さんの心のケアに気を配ることが必要です。

 

【スポンサードリンク】

 

 

患者さんを助けるための理解と対処のポイント

患者さんの心を理解する

苦しさから逃げたい

自傷行為は、患者さんが不安・抑うつ発作に耐えられず、その苦しみから逃れるためにとる行動です。この発作では、情動が激しく動きます。

 

特に、「自分は不幸だ」「自分だけが取り残されてしまった」「こんな病気こなって無念だ」「COさんは何と恵まれているのだろう」というように、自己憐憫、絶望.、焦燥など、マイナスの情動が次々とわき起こり、患者さんは押しつぶされそうになっています。

 

生きたいと思っている

自傷行為の中でも、リストカットは、自分に強い痛みをあたえ、生きていることを確かめる行為です。不安・抑うつ発作では、自責感(自分の責任ではないのに責任を感じ、自分を責める)や、離人症状(自分が自分でないような現実感を失う感覚)にも悩まされます。

 

患者さんは、自分を傷つけることで、自分の「命」を感じ取っているのかもしれません。

 

わかってほしい

患者さんが自傷行為に走るのは、「死ぬほど苦しんでいる」ことをまわりに伝え、「わかってほしい」「助けてほしい」とサインを出すためです。

 

だからといって、「本気で死にたいと思っているわけではないのたから」と軽く考えてはいけません。理解されないことは、患者さんの孤立感を深め、自傷行為をくり返すことにつながります。自傷行為のたびに傷が深くなり、深刻な事態になることもあるのです。

 

 

自傷行為を防ぐ対処をする

注意したい時間帯

不安・抑うつ発作は、多くの場合、夕方から夜にかけて、特に自分の部屋にいるときに起こります。心の変化はわかりにくいのですか、目に見えてわかる 変化としては、わけもなく涙をぼろぼろ流したりといった、急な気分変調です。落涙は女性に多いのですが、男性でも起こります。

 

言葉をかける

リストカットをした患者さんには、「どうしてそんなことをしたの」と叱るのではなく、「それほどつらかったのね」という言葉をかけましょう。患者さんの苦しさのすべては理解できなくても、「わかろうとする」ことはできます。

 

「つらかったのね」という言葉には、家族の思いがこもっており、それは患者さんにも必ず伝わります。それが。自傷行為を防ぐ抑止力にもなります。

 

衝動的な行動にも注意する

助けを求めるサインとしての自傷行為ではなく、怒り発作が激しくなって攻撃性が高まったとき、患者さんが衝動的に自殺してしまうことがありますので、注意が必要です。

 

医師に相談する

心配な場合は、医師に相談して、不安・抑うつ発作を改善する治療を受けます。薬は、パニック障害の薬(抗うつ薬と抗不安薬)をベースにして、眠気や倦怠感には三環系抗うつ薬、気分の変動には気分安定薬、興奮には鎮静作用のある抗精神病薬などを使います。

 

また、認知行動療法も効果があります。特に自責感の改善に有効です。


【スポンサードリンク】